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INTERVIEW | 2024.10.31

第8回
アジアのクリエイターを世界に
―キュレーターのキャリアを持つアーティスト
【Estrella Montien エストレイラ・モンティエン】

2023年12月にハノイで開催された東南アジアを中心とする占いカードの国際コンテスト「Cartomancy Exhibition Challenge カルトマンシー・エキシビション・チャレンジ(以下CEC)」。カードの芸術と文化を国際的に普及し、アーティストを支援するその理念に共感し、東京タロット美術館は協賛を決め、大会の審査員としても参加しました。
そのCECの創設者の一人で、自身もアーティストであるエストレイラ・モンティエン氏にお話を伺いました。


CECVN2023集合写真
CEC2023ベトナム大会にて、ファイナリストと審査員:画像左から6番目にモンティエン氏





── はじめに自己紹介をお願いします
皆さん、こんにちは!タロット・オラクルカードデザインの国際コンテストCECの共同創設者、エストレイラ・モンティエンです。
バンコクのタロットスタジオ、「Bydala Divinations」の創設者でもあります。





1.タロット・オラクルカードの国際コンテスト CECについて


── CEC(Cartomancy Exhibition Challengeーカルトマンシー・エキシビション・チャレンジ)はどのような活動を行っているのでしょうか

CECはイギリスの国際タロット財団のCARTA Awardを受賞したVo Duy Khahn氏の発案を私のスタジオであるBydala Divinationsが支援する形でスタートしました。
単に賞を授与するだけのイベントではなく、タロットアーティストのコミュニティを育成し、サポートすることを目的としています。

とりわけベトナムやASEAN各国のアーティストが国際舞台により多く参加できるようにしたいと考えました。





── 昨年行われたベトナム大会はどのようなものでしたか

イベントは2日間にわたって行われ、初日は7人のファイナリストがフレンドリーで明るい雰囲気の中で自身の作品を紹介し、審査員から質問を受けたり、制作の過程を話したりしました。
2日目はファイナリストの10分間のプレゼンテーションの後、選考が行われ、各カテゴリーの受賞者が決まりました。


CEC2023ベトナム大会会場の様子




結果「THINK Oracle」を描いた21歳の美術学生、グエン・ホアン・ニャット・ミンさんがグランプリを受賞しました。
「THINK Oracle」は手描きの美しいイラストで、困難をしなやかに乗り越え回復する力をテーマにした素晴らしい作品でした。

Think Oracle
受賞作「Think Oracle」と作者の Nguyễn Hoàng Nhật Minhさん



──ミンさんはハノイのベトナム美術大学の学生。
受賞作「Think Oracle」は心と感情に従い、自分が本当に表現したいものに集中したと振り返ります。
CEC大会の参加では自身の成長を感じることができ、多くの友人や師とのめぐり逢いが何より貴重だったと語ってくれました。



──大会の終了後も受賞者への支援を続けられるとのことですね

大会の終了後もCECのイベントは終わりません。受賞者には、バンコクのGypsy Fair(タイで最大規模の占いカードイベント)への旅(航空券、宿泊先、展示ブース、ファンミーティング)が贈られ、作品の販売機会が与えられました。さらに、キックスターターを立ち上げ、全世界へ向けて支援を募ります。

大会後も私たちは受賞者らをサポートし、新たな旅路を歩む手助けをしています。これがCECの活動です。



── 公募によるコンテストとのことですが、日本からも応募可能ですか

CECは現時点では国別の大会となり、残念ながら開催国以外の方の参加はできませんが、
最終的な目標は、すべての国を対象としたグローバルなCECを開催することです。
将来的に東京タロット美術館と協力して、CEC日本大会を開催できたら素晴らしいと思っています。


── 次回の開催予定について教えて下さい
次回の大会はフィリピンで行われます。2025年5月25日、国際タロットデーに合わせて最終イベントを開催する予定です。


モンティエン氏とファイナリストのNatsumiさん、東京タロット美術館館長 CEC授賞式にて





2.ご自身について




── 現在はCECの活動に力を入れていらっしゃいますが、これまではどのようなお仕事をされてきたのでしょうか。ご経歴について教えていただけますか

過去10年間はミュージアムコンサルタントとして働き、政府機関や個人が美術館や博物館を設立するサポートをしてきました。
また、自分自身のデザインスタジオで、弟のオート・モンティエンや他の才能あるアーティストと協力して、音楽作品のアートワークやパッケージデザインなどを制作していました。



── タロットとの出会いはいつ頃どのようなものだったのでしょうか

2008年にオランダ留学からタイに戻った後、私は弟と小さなデザインスタジオで主にユニバーサル・ミュージック・タイランドのCDカバーを手掛けていました。

ある日、家の近くのカフェで、オーナーからタロットのデザインを依頼されました。私がデザインを担当し、他の占い師の方がその解説書を書くという計画でした。
当時、私はタロットについての知識が全くありませんでしたが、幼い頃から占星術やタロットに強い興味を持っていた弟が、このプロジェクトを引き受けるよう勧めてくれたのです。
セントラル・セント・マーチンズでイラストレーションを学んだ弟がイラストを描き、私がアートディレクションを行う形で制作を進めました。

結局、解説書が完成されなかったため、このデッキは出版には至りませんでしたが、振り返ってみると、このことは運命だったように感じています。



── それでは本格的にアートの世界から占いカード業界に入られたきっかけは何だったのでしょうか

コロナ禍で自宅での時間が増え、デザインスタジオの仕事に再び力を入れるようになりました。そこで1920年代の美しいイラストを使用したオラクルデッキ「The Gatsby Love & Wisdom Oracle」の制作に取り組み始めました。1920年代は女性にとって意味深い時代であり、それを表現したいと思ったのです。




── 美術館のコンサルタントとオラクルカードの制作、仕事の内容としてはかなり違いがありそうですね

実は2つの仕事において必要なスキルには共通点が多いです。美術館におけるキュレーションとは、物語をいかに伝え、体験してもらうかということです。カードのデザインでもストーリーテリング、解釈力、スタイリング、美学など、美術館の仕事で使用するスキルのほとんどを必要とします。
さらにタロットの仕事で最も面白いことは、創造性や空想、無意識の世界など、自分自身の中のさまざまなイメージを解き放つことができることです。

美術館業界で15年間経験を積んだ後のこの作業は、信じられないほど楽しくて爽快です。
現在は国内外の様々なプロジェクトでアーティストとコラボレーションを行っています。

タロットの世界は単なる占いではなく、芸術と創造性の世界でもあるのです。



“The Gatsby Love & Wisdom Oracle”






3.今後の活動について


── 最後に今後の展望や活動のご予定についてお聞かせください

クリエイターとして、占いカード業界と美術館の世界の橋渡しをしたいと考えています。「よりよく生きるために芸術に触れる」という概念は、今後数年でさらに注目されるでしょう。
タロットを用いた癒しの可能性に興味があるので、美しい芸術作品をもとにデッキを制作し、カードを使って感情を整える方法を伝えたいと思っています。
CECの会長としては、より多くのアジアの才能をタロットの世界へ迎え入れたいと願っています。






東京タロット美術館 企画展
「アジアのタロット 精神と芸術の融合」
2024.11.1 Fri, ~11.30 Sat,

アジア展サイトビジュアル
CEC受賞作はじめ、多彩なアジアの作品をご紹介いたします。

詳細はEVENT / EXHIBITIONページをご覧ください



PROFILE
  • Estrella Montien エストレイラ・モンティエン
    Raveedaon Estrella Montien, Ph.D

    アーティスト,アートキュレーター,ミュージアムコンサルタント
    「Bydala Divinations」創設者
    「Cartomancy Exhibition Challenge 」共同創設者