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INTERVIEW | 2023.10.17

第6回
繊細なラインから静かに感情を紡ぎ出す
イラストレーター【オザワミカ】

イラストレーター オザワミカ氏によるタロットカード「Heart of Gold Tarot Deck」の出版を記念して、東京タロット美術館で原画展&ギャラリートークが開催されました。
イラストを描き始めたきっかけや占いについてなど、オザワミカ氏にインタビューを行いました。


オザワミカ氏


1.オザワミカさんご自身について



── イラストを描き始めた時期やきっかけはどういったものだったのでしょうか。

イラストと言いますか、自覚を持って絵を描き始めたのは8歳くらいからだと思います。
自分が幼い頃、父が趣味で絵を描いていて、その横で父が描いた水墨画の馬や龍を真似て描いていたのが最初だと思います。


── 小さい頃から描く事が好きだったんですね。
現在はイラストレーターとして活躍されていますが、どのような活動から始まったのでしょうか。


キャリアが長い上に、一般的ではないルートでイラストレーター業が始まったため、何をどこまで話していいのかわからないのですが…。

北原照久さんのブリキのおもちゃ博物館で、ブリキのおもちゃを描いた水彩画のプリントをアートフレームとして販売していただいたことがスタートになるのかと思います。

その後は、舞台演出家になった友人の芝居の宣伝美術(チラシなどのイラストやデザイン)を担当したり、雑誌のカット描きや展示活動が中心でした。
そうした中で漫画家・イラストレーターの江口寿史さんにお目にかかり、2010年に『reply』という2人展を一緒にさせていただきました。
それを機に、交流関係やお仕事の幅が広がっていき、桜木紫乃さんの絵本の作画を担当させていただいたり。

また、書籍のカバーなどのお仕事が増えたのは『BOOKMARK』の金原瑞人さんや三辺律子さんのおかげだと思っています。

私の仕事はいつも人との縁で繋がっていて、ここでは言い切れないくらいありがたい奇跡的な機会の連続で今がある感じです。




2.タロットとの関わりについて



── タロットや占いはいつ頃から興味を持たれたのでしょうか。

母方の祖母が占いが好き、というか、占いによる御宣託みたいなものを信じてる人だった影響で、小さい頃から占い含め、不思議なことに対する抵抗がありませんでした。
だから、中学生くらいから占うのも占われるのも好きでした。


── オザワさんにとってタロットとはどんな存在ですか。

タロットだけでなく占い全般ですが、目に見えない存在からいただく大事なアドバイスのひとつですね。
それを聞いて、自分の気持ちを確認したり、答え合わせをしたりするためのツール。

だから、すごく占いを信用しているけれど、占う側のときも占われる側のときも、伝えること、伝えられたことを「絶対」とは思ってないです。
最後に行動を決めるのも、結果を引き寄せるのも自分だと考えているので、占いに感謝こそすれ、責任転嫁する気はないです。


「Heart of Gold Tarot Deck」



3.今回リリースしたタロット
「Heart of Gold Tarot Deck」について



── どのようなタロットでしょうか。
また、「金」という色をセレクトした理由などあったら教えてください。


タイトルカードのキャプション通り、使われる方の心が「金」のように、強くやさしく輝いていくほうに導いてくれるカードになるといいなという思いからです。
後付けですけど(笑)

今って、コロナ禍を経て、なんとなく疲れ切ってしまったものの、また前に進もうと思えてる時期なんじゃないかと。
やわらかい光が全身を包む金の鎧のイメージ。
なので、あんまりギラギラした印象の金色は選びませんでした。


── 「ぎらぎら」ではなく「ピカピカ」。
ピカピカ輝いているほうへ進んで行こう・・といった思いからなんですね。
イラストについてはいかがでしょうか。特に気を使った個所はありますか。


大アルカナは「塔」や「死神」などのカードが怖くてタロットが引けない、という人が以前いたので、そのあたりのカードが怖くないように留意しました。
それぞれのカードの元々の意味はあるものの、全体的に心が開放されるような印象のものになった気がします。

小アルカナは、細かく補足するためにあるカードなんだと思いますが、個人的にはあんまり説明的な絵にしなくていいかなと思っていて。

自分自身がライダー版の小アルカナの絵が苦手で。
ソードとかいかにも大変そうじゃないですか(笑)

あと数字に、使われる方ご自身が意味を振っていけば、その人自身のオリジナルデッキになりますし。
自分は昔、トランプを使って占っていたので、結果的にトランプっぽく使えていいなと思っています。


── 小アルカナには生き物が4種類出てきます。
それぞれに何か意味はあるのでしょうか


小アルカナの生き物については、
ワンドの野うさぎは「若さゆえの行動力」や「精力的」「躍動感」
ソードの鷹は「機会をじっと窺う沈着冷静さ」や「忍耐力」「常に戦ってる感」
ペンタクルの蜂は「勤勉さ」や「現実的な行動」「物質的豊かさ」
カップの魚は「行き交う愛」や「自由さ」「優しさ」
を、それぞれなんとなく表しています。


── 普段イラストを描かれている時と、タロットカードの絵柄を描いた時。
何か違いや気を付けた事などありますか。


本当のところ、タロットカードに自分は詳しくないので、今回は特にタロットの神さまみたいなものに託したところがありますね。
どこか勝手に描いてもらったみたいなところはあります。
実際に描いたのは私ですけど(笑)

タロットの絵だけではなくて、仕事で描く絵は半分以上何かに託してる。
小説やお芝居のお話や、そのものが持つイメージとか、デザイナーさんとか。

自分だけではない、目に見えるもの見えないもの含めた何かに委ねる余白みたいなものがあるといいのかもしれません。
ただ、その逆の「ああ〜、この人全開だな〜」という方の絵も好きなので、描かれる方次第かと。


── 実は制作期間がとても長ったんですよね(笑)途中コロナの影響でお打ち合わせもうまく出来なくて・・。苦労した点も多かったのではないでしょうか。

ニチユーさんからお話をいただいてから、実際にカードになるまで2年以上かかってしまいましたねー…。

描いてる間に、コロナ禍の影響で自分自身も世の中自身もどんどん変わっていくので、絵柄が何か追いつかなくて。
仕事のスケジュールなどで大きく時間が空いてしまったのもありますが、全然続きが描けなくて、一から別のものを描いたカードもあります。


── 制作してみて何か思う事はありましたか。

今回のタロットだけでなく、仕事の絵でもなんでも、やっぱり絵には自分自身のその時のあり方が反映されるなと思いました。
特に、タロットカードや、個人的に作っているオラクルカードなどは、その時の世の中みたいなものもすごく反映すると思います。


── とても大切に作られたカードだという事がわかります。
「Heart of Gold Tarot Deck」を使う方へのメッセージなどありますか。


天邪鬼なので「前向き」という言葉が苦手だと前置きしつつ(笑)。

苦しい現状の中にいる人が深呼吸するタイミングに使っていただけるといいなと思っています。
すぐに前は向けなくても、一呼吸ついた結果、前向きに進んで行ってくれたらうれしいし、後戻りすることを選ぶ勇気を持つことに使ってくれてもうれしいです。

もちろん全然苦しい現状ではないときに、サイコロを振るくらいの気楽さで使ってくれるのもうれしいです。



ギャラリートークの様子



4.「自己との対話」について


── 東京タロット美術館は「自己との対話」をコンセプトとしています。
オザワミカさんにとって「自己との対話」とはどのようなものでしょうか


「自己との対話」は多い方かもしれません。
クヨクヨしがちの人生なので(笑)

頭の中だけで考えるとあんまりいい方にいかないことが多いので、口に出しながら占いをしてみたり、日記のようなものをたくさん書きます。
嫌なことがあったときほど書いてますね。

いいこととかには置き換えず、「悔しい〜」とか「なんだよ〜」とか、嘘偽りなく、大人気なくそのまま書きます。
ある意味『デスノート』なんですが(笑)、書いていくうちにだんだん気が済んで、最後の方は、たいてい自分を反省してたり、労ってたり、相手を許せてたりして、最終的には『マインドリセットノート』になってると思います。

どんなこともいったん自分の感情を知って、それを自分の外に出すことが大事で、反省とか相手への許しとかは、その後でいいと思ってます。

「自己との対話」はいつも自分が自分の味方になるためのものだと思ってます。
自分のまわりにいてくれる人たちのことを信じていますが、外に自分の味方を求め続ける人生はしんどいときがあるので。




5.今後の活動について


── 今後の活動や目標などありましたら教えてください

今のまま、イラストとデザインの仕事を自分の体に無理がない範囲でしつつ、現在はクチコミのみでわずかにしている占い業も増やしていけたらいいかなあ、とぼんやり思っています。
しかし如何せん、どちらも「待ち」の仕事なので。

今までもそうでしたが、天に託して、流れるように、流されるように?(笑)、これからも生きていきたいと思います。

Heart of Gold Tarot Deck出版記念 原画展





オザワミカ×東京タロット美術館
Heart of Gold Tarot Deck出版記念
原画展&ギャラリートーク

<原画展>
2023.8.30 Wed – 9.9 Sat

<ギャラリートーク>
2023.8.30 Wed

詳細はEVENT / EXHIBITIONページをご覧ください